ムンバイの温かい人々と、非情なインフラ環境【海外インターン体験記】【インド】【連載2】京都大学 米谷美咲
こんにちは!
インド・ムンバイに海外インターンシップで来ています、京都大学理学部2回生の米谷美咲です。
今回は、NGOでのがんサバイバーシップの活動と、ムンバイで起きたショッキングな出来事についてお話しします。
ムンバイのNGOでの、がんサバイバーシップ
私の参加するプログラムでは、Indian Cancer SocietyというNGOで、4週間活動します。
皆さん、「がんサバイバーシップ」という言葉を知っていますか?
おそらく聞いたことがない方が多いと思います。
がんの患者だけでなく治療が終わった方も含め、すべてのがんと診断された人のことをサバイバーと呼びます。
サバイバーシップとは、そのサバイバーを支えていく活動のことをいいます。
私の活動内容は、まず世界各国でがんサバイバーが受ける配慮や特権について調べ、次にインドに取り入れられるように計画を立てるというものです。
この活動では、サバイバーの定義を「がんの治療を終えた人」に絞っています。
より詳しい内容については、次回お伝えします。
NGOで触れた、ムンバイの人の温かさ
ムンバイで出会う人たちは、みんな明るくて元気いっぱいです。
Indian Cancer Societyでは、がんの患者やサバイバーも一緒に働いています。
多くのサバイバーは英語を話すことができません。そのため私が彼らと直接コミュニケーションをとることは難しいです。
それでも、毎日お昼ご飯やチャイを入れてくれて、Thank you!と言うと素敵な笑顔を向けてくれます。
そのために美味しさが増す気がするほどです。
この活動をやり遂げる決意
ある日、帰りのタクシーで職場のサバイバーの女性と相乗りになりました。
駅前に着いて降りると、彼女が私に話しかけてくれました。
「~~~~」
うーん、ヒンディー語…
分からないのでニコニコしていると、なぜか腕を組んでくれました。
タクシーを降りてから駅までの短い間を一緒に歩いただけでしたが、とても温かい気持ちになりました。
たった4週間で、こんな私が、少しでも成果を残せるなら、それが彼らのためになるなら、この活動をきっとやり遂げよう。
そう決意を新たにした日でした。

この日はお祭りで、職場の多くの女性がサリーを着ていました。
温かい人々とは裏腹の、非情な現実
「ニュースを見た?」
見ていない、と伝えると彼女はパソコンでニュースを見せてくれました。
Mumbai railway station stampede kills at least 22
人が積み重なり、血だらけになっている動画。
人の身体と身体の間から力無くダランと垂れている誰かの腕。
必死に助けようとする人々。
“22 People Killed”の文字。
職場からも15分ほどの場所で、22人もの人が亡くなっている。
ただただ恐ろしく、このときは何が起こっているのか理解できませんでした。
その後は、ずっと仕事が手につかず、ニュースを追っていました。
大雨で雨宿りしていた人々が一気に出ていこうとして、1人の女性が階段で足を滑らせて将棋倒しになったそうです。
「巻き込まれなくて良かったね。」
日本の友人は皆そう言いました。
たしかにその通りです。もし巻き込まれていたらと考えるとぞっとします。
でも、それ以上にショックでした。
こんなに温かいムンバイの人たちが、通勤ラッシュ、大雨、足を滑らす、そんな毎日どこででも起こりうることで亡くなってしまうことが悲しくて仕方がなかったのです。
もし、階段の幅がもっと広ければ、大雨でも水が大量に階段に流れるような構造の駅でなければ、22人の命は助かっていたんだろうか。
未然に防ぐことはできなかったんだろうか。
そんなことを考えつつ、数時間後には何事もなかったかのように運行する列車を見て、どうか同じことが二度と起こらないようにと願うことしかできませんでした。