【YouthSpeak Forum2016】
『社会課題をどのように解決していくか』――パネルディスカッション

2016年10月16日、アイセック・ジャパンは国際連合の掲げる持続可能な開発目標SDGsをテーマとした社会人・学生の登壇イベント「YouthSpeak Forum 2016」を開催しました。本記事では、第3部で行われた『社会課題をどのように解決していくのか』をテーマにしたパネルディスカッションを取り上げます。

一般社団法人Japan Innovation Network 専務理事 西口尚宏様

公益社団法人 セーブ・ザ・チルドレン・ジャパン アドボカシー・スペシャリスト 大野容子様

外務省 国際協力局 地球規模課題総括課 遠藤智様

Japan Gaza Innovation ファウンダー 上川路文哉様

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西口:

ジャパンイノベーター組織の専務理事の西口尚宏です。

突然ですが、私から皆さんに一番お伝えしたいのは、世界は繋がっているということです。 これからは世界中のイノベーションシステムと繋がりながら、いかに大きなことを起こすのかが問われてきます。 私はUNDP(国連開発計画)と共同で、SDGs(持続可能な開発目標)に取り組んでいます。具体的にビジネスと関係させる基盤として、ニューヨークとも連携して運営をしています。 この事業のポイントは、日本企業や皆さんのような学生、海外の方、日本にいる20万人の留学生と連携しながら、具体的な成果を出していくことです。 そこで、今回はアイセックの皆さんとコラボレーションしたいと思いました。 今日は皆さんにとって、参考になる意見が出せるように運営していきたいと思います。

 

大野:

公益社団法人Save the Children Japan(以下SCJ)の アドボカシー・スペシャリスト、大野容子と申します。

SCJはNGO団体であり、政策提言という立場から様々な協働を行なっています。例えば、SDGsを中心に置いて、政府国会議員や外務省などへの働きかけを行っています。 また、国際機関や企業、有識者の方等との連携も取っています。 SDGsは、開発だけではなく、環境や国内の問題にも取り組む包括的な目標です。 だからこそ、国際協力のNGOのみではなく、国内の、その中でも東京だけではなく地方のNGOと連携を取りながら、SDGsを説明する冊子を作って小学生に話をしています。 では、私が何故NGOでアドボカシーをしているのか。 それは、様々な社会問題の対処療法ではなく、根本的な構造を変えるのがアドボカシーの仕事の一つだからです。

 

遠藤:

外務省の国際協力地球規模課題総括局の遠藤智と申します。

私は2010年に入省したので、今年で7年目になります。 今は政府全体でSDGsについて、国内実施と国際協力の両面で取り組むということで、NGO や民間企業の話を聞いた上で政府としての対応をとりまとめています。 私が外務省に入省したのは、陸奥宗光という日清戦争当時の外務大臣に憧れたからでした。自分にとって大切なものの為に自ら命を捧げる彼に憧れ、そうありたいと思うようになりました。 今あるこの豊かな社会というのは、今突然できたものではなく、過去の人の努力の結果です。今の世代は過去の世代のつくったものを更に発展させて将来に残す義務があると思い、入省しました。 外務省に勤める中で、ケニアで過ごした2年間が私の人生を変えました。 私は外務省職員ですが、国際協力やアフリカには興味がありませんでした。 しかし、それがケニアでの2年間で変わったんです。 日本はケニアで学校の教室改築の支援をしていました。 その活動は1000万円ほどの支援でしたが、1000人くらいが集まって祝福しており、「日本ありがとう」と言っているのを見て、日本も伊達じゃないなと思ったんです。 また、現地では、官房副長官の通訳をしたり、ケニアのナイロビに住む日本人800人とで野球をしたりしました。 今年の9月に日本に帰国し、今はSDGsに関わる業務をしています。

 

上川路:

Japan Gaza Innovationの上川路文哉といいます。

私は、日本・イスラエル・パレスチナ学生会議を立ち上げました。 きっかけは、イスラエルにいる友人に、パレスチナに対してひどいことをするなと言ったところ、論破され、二人でじっくり話そうということになったことでした。 仕事としては、電気自動車の輸出入など、様々なことをしました。 2011年から昨年の11月までニューヨークに駐在していましたが、今はチリのプロジェクトに関わっています。 資源開発という現地のコミュニティーを考えたかったのですが、利益を考えるとそれは難しいことでした。エシカルな仕組みを作りたいと思っていたのですが、商売をする環境ではなく、やり遂げることはできませんでした。 商社は、次代のニーズの産業的解決者と定義できます。しかし、国造りなどのリスクが高い国ではその危険を選択することが難しく、紛争後のビジネスに興味があったのですがそれはこの物産ではできないと感じ、自分でやっていこうということになりました。 また、2月にGAZA アントレプレナーチャレンジをやることになったので、このようなリスクのある国で社会投資の基盤を創りたいと思っています。物産も世の中のトレンドが社会的な問題に絡んでくるということもわかっているのですが、現場にはそれに対応している余裕がなく、今の状態ではここには自分の認められる舞台がないと感じています。

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西口:

今日は皆さんには率直なところを話していただきたいと思っています。 今SDGsが出てきましたが、まず大野さん、SCJにとってSDGsとはどういうものなのか、教えてください。

 

大野:

SCJはNGO団体なので、社会課題解決のために取り組んでいます。 SDGsは2、3年かけて議論してできたものであり、その議論の課程からSCJは参加しました。 SCJにとっては、子供の権利を守り、且つ、推進するというのがSDGsのポイントです。全てに子供が関わっています。SDGsは、達成すれば素晴らしいものであり、私たちにとってはチャンスです。また、グローバルな社会との共通言語だという認識もあります。

 

西口:

今までは、共通言語はなかったのですか?

 

大野:

人権や、ジェンダー平等、というような曖昧な、規範的なものはありました。 世界がこれは大事にしなければいけない、というような概念は。 しかしそれとは異なり、今回はきちんと2030年までという目標の区切りがあり、ターゲットも明確化されており、グローバルへの発信もしっかりされています。 法的義務としては京都議定書がありますが、SDGsのような、義務ではなく、目標と指標があり、その結果を出すために活動するような共通言語は初めてです。

 

西口:

今まさに2030年まであと15年と身近になっていてリアルな話ですね。 2030年には達成できているはずだと思います。

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西口:

遠藤さんは外務省という立場から包括的に見ていらっしゃいますね。安倍首相がトップであるSDGs推進本部から、どのように感じていらっしゃるのかを教えてください。

遠藤:

まず私が強調したいのは、日本はSDGsの前身であるMDGs(ミレニアム開発目標)の頃からいろいろなことをやってその達成に貢献してきたということです。 MDGsは途上国支援が中心ですが、日本が大いに貢献しました。 特に、ケニアにいた私は、アフリカの発展に果たした役割は大きいと思っています。 日本は、政治的な利害関係に囚われずに相手とのwin-win関係を作ろうという観点から、1960年代からアフリカの国々の独立への支援や、道路や空港建設など国の発展の基礎インフラの支援をしてきました。 アフリカの国々は、そこを高く評価しています。 また、過去の経緯を振り返ると、東西冷戦が終わった1991年が分岐点だったと言えます。欧米諸国は共産圏や自由主義という点から東南アジアやアフリカを支援していましたが、その影響は大きく、援助疲れで冷戦が終わり、同時に支援も終わりました。 日本はそこで支援を終えなかったと、ケニア人は評価しています。 今の大統領や副大統領が学生だったあの頃に、日本はアフリカを見捨てなかった、と。 日本の支援の特徴は、都市だけでなく、地方に転換して、様々な支援を行っていたことです。1000万円くらいの支援プロジェクトで、学校や井戸を作り、多くの活動を継続的にやってきました。そういう意味でMDGs達成に大きく貢献してきたのです。 こういった貢献は評価されるべきだし、これからも続けていくべきなのです。 ただ、これからはどうするのかというのが論点になっています。 世界の問題、例えば気候変動などがあります。 また、アフリカは経済成長でプライドや経済価値が大きくなってきています。 今までのように日本が一方的にアフリカを支援対象として見るのではなく、一緒にビジネスをするパートナーとして見る時代が来るのではないでしょうか。 私はアフリカに興味がなかったので、貧しい人たちがいるところで、電気や水もないところだと思っていましたが、都市部はもっと発展していました。 今後は、持続可能な経済を作っていく為に、日本の民間企業が入っていくべきだと考えています。

西口:

今とても大事な論点が出たので、それを中心に聞いていきたいと思います。 継続性という話がポイントでしたね。日本が逃げなかったことをアフリカの国々が感謝している。 TICAD(アフリカ開発会議)でも安倍首相や大企業のトップが集まりましたが、アフリカからのメッセージは、援助ではなく投資がほしいということでした。ここがトーンチェンジであり、メッセージも以前とは変わっています。その中で、これから先どういう関わり方をしていくべきなのか。対処療法的なのか、それとも何か違う方法なのか。SDGsを達成する為に求められている、継続的な関わり方とは何なのかを考える必要があります。

大野:

2030年までにどう投資していくかですね。継続性は非常に重要です。同時に、キーワードは持続可能性なので、投資をした結果、それが与える影響を是非考えてほしいと思います。 何か問題があってそれを解決するために投資をして、例えば病院を作って、それで終わりにしていいのかということです。その病院が機材メンテナンスできるか、アクセスできない人に対してはどうするのか、薬の流通はどうするのか、医師の働く環境はどうなのか、国から優秀な医師や看護師が流出しないようにどういう政策がとられるのか、など、それらをきちんと考えているのかということ。 ただ投資をするだけで終わるのではなく、そこから派生する影響と、持続可能にするための間接的な土台としての投資が必要なんです。 “no one left behind”というのがキーワードです。 今まで様々な形で援助をしてきて、中国やインドが国力の底上げをしましたが、そこで取り残された人がいます。その人たちがきちんと投資の恩恵や、投資による経済的・社会的アクティビティに参画できるということが重要なのだと思います。

西口:

つまり、根本的な解決を目指すべきだということですか?

大野:

社会課題を対処療法的に解決するようなやり方ではなく、その社会課題が生まれてくる社会の仕組みや構造に問題があるのではないかと思うんです。そこを深く考えていかないと問題は恒久的には解決しないと思います。 例えば、日本で貧困が広がっていて、対処療法的な支援は様々な形で行われています。それも大切なことですが、ではその貧困が生まれた社会の在り方にも問題はあると思うんです。

西口:

その為には、その社会課題の根本的な問題点を理解してしっかり考えられる人が必要ですね。根本部分をどう見つけるのか、どのようなアプローチが必要かについてはどう思われますか。

上川路:

根本的な問題の解決には、現場に足を運ぶことと座学、その両方のバランスが大事です。現場重視であることと、知識から見ることと、その両方の視点から動ける人間を養成することが必要です。持続可能な解決策を出すと言うのも、企業が行えばそれでは利益が出にくいという面があり、そこもバランスが重要です。一方で国連や外務省は『政策』として行うことができる。この『政策×儲け』の形ができると、根本的問題が見つけやすくなり、関わっていけるようになります。

西口:

両面から見るというのはアイセックの皆さんにとっても重要ですね。 私は世界銀行で働いたとき、各国にお金を貸していました。寄付金ではなく、金利をとってビジネスをしていました。 儲けを出すというのは悪いことではありません。そこに本当に価値があれば対価を払う人がいて、それに対して対価を払う人もいる。 世界経済がそうなっています。

遠藤:

これは個人的な意見ですが、今までの支援は一過性のものが多いと思うんです。相手が何を望んでいるのかというよりは、これをあげないといけないからあげる、というような支援でした。相手ありきの考え方ではなく、相手はきっとこうだろうという考えがベースになっている。でもこれは全然継続性がありません。先程西口さんも仰っていましたが、私も儲けはお互いにとって良い物であり、重要だと思います。そういう関係でないと長くは続きません。 アフリカや東南アジアにODA(政府開発援助)をしていますが、それを民間企業が進出する足掛かりにしなくてはいけない。国として、そのための情報提供をするのが重要です。 やはり現地に入るのはリスクがあります。中東に近い、というような、漠然としたリスクの認識で動いている状況があります。でも例えば、現場の大使館が現地の治安情報や内政、テロや暴動を事前に把握していて、その情報を密に民間企業に送るなどすれば、民間企業も進出していきやすくなります。それがアフリカで求められていることでもあるんです。ケニアの大統領も、日本の支援には感謝しているが、これからはビジネスとしての付き合いをしていきたいと言っていました。日本も、国としてできることもありますが、民間企業が進出していくことで、また持続可能な発展を目指せると思います。

西口:

このSDGsはとても大きな話で、ゴールだけを見てもピンとはきません。ターゲットや、更にそれを分解して自分に何ができるのかなどを考えることが重要です。

遠藤:

SDGsの一つの特徴として、全てのゴールに繋がり、統合性があるということがあります。私は、全てのゴールに取り組めとは思いません。一つでいい、何かを変えれば他を変えることにも繋がります。 政府として枠組みや法律を作ることができますが、法律は実行しなければ意味がありません。学生である皆一人一人が意識して動く必要があるわけです。ひとりひとりの意識を変えることが必要なんです。全てではなく、ひとつ分野を決めて、それを解決する手段を考え、実行に移していく。するとそれが他の分野と関連して社会全体にいい影響を与えます。そこから始めるのがまず重要なんです。

西口:

確かにどの目標も関連してきますね。全部を見るのではなく、一つか二つを選んでそこからどうするのかを考えること自体が重要なエクササイズであるとも言えます。根本的な解決や継続性という観点で見ること自体が重要なポイントになっているんです。 私たちも、そのように考える流れを世の中に作り、多くの日本企業が元々持っているノウハウを社会課題解決に活かし、それを本業にしていけるようにしたいと思います。

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西口:

最後に、ここにいるアイセックの皆に向けて、学生に何を学んで欲しいか、今日これを学んだと思って帰ってほしいか、などについて一言お願いします。

上川路:

皆には「やっちゃえ」と言いたいです。「見る前に飛べ」という言葉があります。とりあえず行動して見て、後で考えればいいと思うんです。 サポートしてくれる友達や、自分なりの逃げ場を持っていれば、基本的にはめげずに面白くやり続けられると思います。死ぬ前の自分をイメージしてください。死ぬときに「人生頑張ったな」と思えることが大切だと思います。そう思えないなら、やりきれなかったということだと思う。そうならない為に、死ぬ前の自分を心のどこかでイメージしていてほしいと思います。

遠藤:

私からは、「百聞は一見に如かず」。最初に、アフリカの経験が私の世界の見方を変えたという話をしました。恐れないでやってみて、そこから学ぶことが大切なんです。なんでもいいからやってみること。やってみれば自分に何ができて何ができないのか、何が得意で何が苦手なのかがわかります。自分の専門性を理解してそれを磨くことが、究極的にはSDGsの達成にも寄与します。最終的には自分の為に生きることが、良いスパイラルを築くのだと考えています。

大野:

私は、SDGsには関係ないかもしれませんが、卒業後の自分の在り方について。卒業して、企業に入る学生が多いと思いますが、それぞれの組織にはそれぞれの論理や大切にしているものがあります。それに頑張って染まり切らないようにしてほしいと思います。組織に染まるのは簡単です。しかし染まってしまうと、社会課題解決の為にいい発想ができなくなります。そうではなく、頭を柔軟に、自分が大切に思うものをしっかりと守っていかなくてはいけないんです。自由な発想や組織の論理を疑うということ、社会構造や社会の状態を批判的に見るということが、自分の力を向上させていくんです。

西口:

ありがとうございました。 物事を根本から捉えることが重要なんですね。一過性の取組ではなく、継続性を以て新しいことを試行錯誤して取り組むこと。現地に赴いて自分の目で見ること。見つけた課題に対していきなり解決策を考えるのではなく、その裏に何か課題があるのではと疑って様々な視点から考えること。 そうした取り組みをすることで、21世紀にとってかけがえのない人材になっていくのではないでしょうか。


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